空手 | 剛柔流の三戦とは何か

空手 | 剛柔流の三戦とは何か

古くから沖縄より本土に伝わった、

通常とは一線を画する型が、

三戦』です。

『サンチン』と呼びますが、

源流は中国にあるということで、

那覇系を始め、いくつかの流派で見られます。

また、

『三進』、『参戦』と表す流派も存在するとのことです。

最もポピュラーなのは、

『剛柔流』と『上地流』の三戦ですが、

『手』の形に違いがみられ、

  • 剛柔流:閉手(握拳)
  • 上地流:開手(開掌)

で鍛錬します。

三戦を日本に伝えたのは、

東恩納寛量』と言われています。

それは、

中国から伝えられた、『白鶴拳』の基本の鍛錬型で、

素早く貫手で突いて掌を返しながら

引いて構えるといった、

開手(開掌)によるものでした。

また、

呼吸法も音を表に出さないで、

技の極めに『シュ!』と発するものでした。

このことから、

上地流は、そのまま伝承したということが考えられます。

現在の剛柔流の力強い呼吸とゆっくりと行う動作は、

宮城長順』が変えたといわれています。

興味深い三戦ですが、

今回は、

閉手(握拳)による、剛柔流の三戦を取り上げたいと思います。

三戦の源流です。
『白鶴拳 三戦』
(Ng Hua joo)

上地流の開手による三戦
『沖縄空手上地流 - 二代目上地完英による形』
(manjigeri)

現在の剛柔流基本形です
『剛柔流「三戦」』
(三 戦)

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剛柔流の三戦とは?

剛柔流の特徴は、

自分の肉体を極限まで鍛え上げることにあります。

そして、

剛柔流の代表とする鍛錬法が、三戦です。

他を寄せ付けない圧倒的な力強さと、

空気が裂けるほどの荒々しい呼吸。

肉体を極度に緊張させながらの鍛錬は、

全身のエネルギーが極限に高まります。

また、

視点を一点に据えた、三戦の精神統一は、

全エネルギーの源です。

自己の動き全てに気を配り、

一つ一つの動作を激しくゆっくり繰り返します。

その特徴は、

三戦の鍛錬には、他の型にあるような

目の前に仮想の敵を作らないことです。

ただ自己の研鑽のための鍛錬を繰り返します。

これにより、

常に自己を最大限に練ることになり、

戦いを制するという考えに至ります。

これが剛柔流の神髄です。

空手とは、

先ず自己を磨くことから始まります。

そして、

この原点に最も立ち返った姿が三戦です。

剛柔流の三戦のあり方 | 型か鍛錬法か?

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出典:yahoo.co.jp

現在、空手の流派、団体は、

大小問わず、亜流を含めたら、

それこそ数えられないほど存在します。

しかし、

空手の世界で、

流派として最初に命名されたのが、

剛柔流』です。

剛柔流の空手は、力強く重厚である『剛』、

曲線でしなやかさな動きの『柔』といった、

表裏一体の要素を併せ持っています。

三戦は剛の要素を象徴とした鍛錬法です。

極度に全身を緊張させて、深い呼吸を行うと同時に、

安定の状態を保ちます。

筋肉と呼吸を常に意識しながら、

一つ一つの動作をゆっくりと確実に力強く行います。

三戦は、剛柔流の基本形となっています。

そのために、型との見方をしている流派も存在します。

しかし、

三戦はあくまでも、

自己鍛錬としてのためのものと考えます。

結果的に、

組手や戦いに繋がる体の動きが作られるとしても、

型として考えるのは、

本来の三戦のあり方ではないと考えます。

何故なら、

すべての型は仮想の敵を想定して、

攻防を動きが造られていますが、

三戦においては仮想の敵は存在しません。

突きの動作も受けの動作も、

単調な基本型の技の繰り返しです。

そのようなことから大会では、

競技として採用されない、

内なる取り決めがあるようです。

鍛錬法としての剛柔流の三戦、その効用は?

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出典:yahoo.co.jp

自己鍛錬としての三戦がもたらす効用とは何でしょうか?

これは主に次の4点があげられます。

  1. 呼吸法
  2. 筋力
  3. 内蔵調整
  4. 気の統一

これらの鍛錬のために、

三戦は最大の効力を発揮します。

特に、呼吸法の鍛錬が、

三戦のもっとも意味するところです。

三戦は現在、

最初の動作で、3歩前進するというのが、

剛柔流の基本形とされています。

しかし、

もともと歩数についての決め事はなく、

指導者によってその時々で、

何歩進むか決められていました。

肉体的鍛錬を極限まで追求する剛柔流にとって、

三戦は大きな原点といえるでしょう。

かつて剛柔流では、入門者は3年間、

三戦のみに稽古の時間を費やしたといいいます。

『鍛錬とは何なのか?』

三戦によって理解することとなり、

剛柔流の象徴と知ることになります。

それでは、

先に述べた三戦の主な4つの効用を見ていきましょう。

呼吸法(息吹) | 三戦の効用1

三戦の鍛錬の目的は、

この呼吸法にあるといっても、言い過ぎではないと思います。

三戦で用いられる呼吸法を剛柔流では息吹(いぶき)と呼びます。

息吹は剛柔流における独特の呼吸法です。

呼吸は日常生活において、

なくてはならないということは当然のことです。

また、

それは無意識のうちに行っています。

剛柔流では、

それを意識的に行うことを鍛練します。

具体的には、

息吹によって、骨盤をたて、

横隔膜に刺激が行き渡るように意識します。

腹式呼吸を意識して、

横隔膜の動きをより活発にします。

相手との攻防において、

気合いを発した時に、自然と空気が腹に取り込まれ、

意識的に腹圧をかけます。

これが横隔膜の収縮です。

三戦の息吹によって、

横隔膜の収縮のコントロールが自在にできるまで鍛錬します。

これによって、精神的にも安定してきます。

戦いや組手において、

精神の不安定や呼吸の乱れは、

致命的なのは言うまでもありません。

一瞬の迷いや、呼吸の乱れを相手に察知され、

勝敗を大きく左右するからです。

三戦の息吹きは腹式呼吸ですが、

通常の吸った時にお腹を膨らませるのではなく、

逆にへこませ、横隔膜に空気を送り込むように意識します。

鼻から最大限に吸い込んだ頂点で、

若干息を止め、

『カーッ!』と力強く息を吐きだします。

この時もお腹をへこますのではなく、

丹田(おへその下辺りの体の内側)を

膨らませる感覚で意識します。

7分吐きだしたら、再度息を止め、

残りの3分を勢いよく吐き出します。

息吹は丹田呼吸ともいわれています。

これを繰り返し行います。

筋力 | 三戦の効用2

ウエイトトレーニングのように器具を使用しても、

筋力のつけ方は色々ありますが、

三戦には筋肉の鍛錬として、

効果的な動作が多く存在します。

表面上の筋肉だけではなく、

内部、いわゆるインナーマッスル(深層筋)

の強化にもつながります。

もちろん三戦は何も持たないので、

負荷は自分の意識でかけることになります。

一つ一つの筋肉に気を配り、きちんと締めてゆきます。

三戦は極度の緊張を持続させるため、

筋肉の締めや持久力にも効果をもたらします。

内臓調整 | 三戦の効用3

三戦は内臓諸器官の鍛錬にもなります。

深く力強い呼吸で、

大きく横隔膜を収縮させることで、

内臓諸器官の筋肉が練られます。

普段、内臓の筋肉に負荷をかけたり、

刺激することなどあまりないと思いますが、

三戦は、呼吸と横隔膜の収縮を基本とした動作から、

自らの内臓調整に大きな役割を果たします。

身体の内側から鍛錬することで、

体幹トレーニングにも優れた効果を発揮します。

気の統一 | 三戦の効用4

全身を緊張させ、ゆったりとした動作、

力強くかつ、深い息吹。

三戦を立禅と捉える人もいます。

集中力はきわめて高い位置に達しています。

視点を定め、一点に集中し、自分よりも高い位置を見据えます。

全身を緊張させるために、筋肉を極限まで締めます。

さらに、

緊張させた全身の筋肉各々を意識し、

確認する作業を怠らないようにします。

これらには、常に息吹が伴います。

規則正しく繰り返し行うことによって、

さらに集中力が増し、気が統一されてゆきます。

剛柔流の三戦、鍛錬の追求 | まとめ

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出典:yahoo.co.jp

三戦の鍛錬は、上衣を脱いで行うとよいです。

自らの体の状態が、より分かりやすくなります。

いくら意識しても、

肩が上がったり、脇がゆるんでいたり、顎が上がったりして、

体のどこかでバランスが偏っていることがあります。

これらは、精神が不安定になったり、

呼吸が乱れたりするときに顕著になります。

これらを無くすためには、

ただ、ひたすら鍛錬に励むことです。

また、

指導者の立場にある人に、偏っている部分にふれてもらい、

修正してもらうと自分でも気づきやすいです。

三戦をきちんと習得できたときに、

日常生活においても効果を発揮します。

三戦は息吹という呼吸法により、

活力を生み出す鍛錬なので、

自分が落ち込んだ時や困難が立ちはだかったときに、

生きる姿勢が表れるということです。

呼吸力、気力、筋力、内蔵力、

全てに覇気をもたらす三戦は、

まさに、肉体の内外の統一であるると考えます。

これは、

型としてとらえない、

鍛錬としての三戦を追求する剛柔の神髄なのです。

沖縄剛柔流空手の八木明人館長
『ド迫力!沖縄空手の呼吸法!Breath in Okinawan Karate』
(kuro-obi world)